第48回日本分子生物学年会
日時:2025年12月3日 (水) ~ 5日 (金)
場所:パシフィコ横浜 (神奈川県横浜)
案内サイト:https://www.aeplan.jp/mbsj2025/index.html
▶学会内にて、関連するシンポジウムが開催されました。
シンポジウム 2MS-13「雷!プラズマが駆動型科学にみる植物内分子応答」
日時:12月4日 (木) 11:15~12:35
オーガナイザー:國枝正 (奈良先端科学技術大学院大学), 古閑一憲 (九州大学)
人工的雷である「プラズマ」を生物に応用する研究が進んでいる。プラズマで発生した活性酸素による生体応答が分子メカニズムのひとつとして認識される中、自然現象ではありえないような短寿命な分子や機能性分子、電場を与えて対する応答を起こすことができる。一方で、その背景にある分子メカニズムは不明な点が多い。本シンポジウムでは、分子生物学者には馴染みが薄いプラズマのいろはから、植物特に種子を対象としたプラズマに対する植物の応答メカニズムを紹介し、分野融合的に議論したい。
「大気圧空気プラズマによる活性種選択合成と植物機能制御」金子俊郎、佐々木渉太、東谷篤志、高橋英樹(東北大学)
大気圧低温プラズマは、気体に高エネルギーを与えることで生成され、電子・イオン・中性粒子・励起種が共存する非平衡状態である。本講演では、空気を原料とし、活性酸素種・活性窒素種を選択的かつ高密度に生成する制御技術と、その植物応用の基礎について報告した。
「雷!プラズマが駆動する種子内分子動態」石川健治(名古屋大学)、古閑一憲(九州大学)、伊藤篤史(核融合研)、國枝正(奈良先端大(現 京都府大))、魚住信之(東北大学)
プラズマを液体に照射することで生じる化学反応と活性種生成に着目し、特に過酸化水素や窒素系ラジカルの形成とその輸送機構を解析した。種子表面から内部への活性種移行や初期シグナル応答を通じた生理変化について、その汎用性を示した。
「プラズマ活性水による発芽促進への多層効果」Grainge Giles(1ロイヤルホロウェイ・ロンドン大学)、氏家凛乃(2帯広畜産大学)、石川健治(名古屋大学)、Leubner Gerhard(1)、中林一美 (2)
低温大気圧プラズマで調製したプラズマ活性水を用い、種子休眠の人工制御機構を解析した。硝酸イオンを介したシグナル活性化や細胞壁の化学的緩和が、遺伝子発現制御と協調して休眠解除を誘導することを明らかにした。
「プラズマによる種子発芽覚醒機構」石橋勇志(九州大学)、江原宏(名古屋大学)、新田洋司(福島大学)
プラズマ照射による種子発芽促進が各種植物で報告される中、発芽時期制御の重要性に着目し、プラズマ種子処理の基礎と分子応答を整理した。環境変動下における安定的食料生産を支える手法として、プラズマ農業の可能性を論じた。
「精密温度制御大気圧プラズマを用いた植物細胞へのたんぱく質導入」柳川由紀(千葉大学)、杉浦諒、相澤駿輝、末永祐磨、飯島勇介(1東京科学大学)、光原一朗(農研機構)、沖野昇俊 (1)
大気圧プラズマを用いた植物細胞へのタンパク質導入技術を開発し、GFP導入に成功した。温度制御型プラズマ装置を用い、細胞損傷を抑えた導入法を確立し、機構解析と応用展開の可能性について報告した。
*当日の様子

▶実施レポート
2025年12月4日(木)に、パシフィコ横浜において第48回日本分子生物学会年会内で、「雷!プラズマ駆動型科学にみる植物内分子応答」と題するミニシンポジウムが開催されました。当日は予想を上回る60名以上の聴講者が来場し、会場は盛況のうちに終了しました。ご参加くださった皆様、誠にありがとうございました。また、本シンポジウムを開催するにあたり、オーガナイザーを務められた國枝正先生および古閑一憲先生をはじめとする科研費・学術変革(A)「プラズマ種子科学」の参画者各位に感謝申し上げます。
これまで、プラズマバイオ応用に関する研究は主にプラズマエレクトロニクス分野を中心に発展してきましたが、生命科学系学会における注目度は必ずしも十分とは言えませんでした。一方で、人工的な雷ともいえる「プラズマ」を生物へ応用する研究は世界的に進展しています。特に、プラズマによって生成される活性酸素種が生体応答を引き起こす分子メカニズムの一つとして認識されていますが、自然現象では存在し得ないような短寿命分子や機能性分子、さらには電場を介する応答など、多様な現象が観察される一方で、その分子メカニズムには未解明な点が多く残されています。
本シンポジウムは、分子生物学者には馴染みが薄いプラズマのいろはから、植物特に種子を対象としたプラズマに対する植物の応答メカニズムを紹介し、分野融合的に議論することを目的して企画されました。その結果、当日は予想を上回る60名以上の聴講者が来場し、活発な議論が展開されました。
プログラムに示したように、本シンポジウムでは概要報告ながら、プラズマエレクトロニクス分科会に関連する生命科学分野の学会において、低温プラズマ科学の研究成果をアウトリーチできた点で非常に有意義な場となりました。また、プラズマ種子科学は現在まさに発展途上の分野であり、今後数年の研究進展による大きな展開が期待されます。