学術変革領域研究(A)の公募研究の内容
領域番号: 24A206
プラズマ駆動種子記憶操作:プラズマが駆動する種子内分子動態の学理創成
領域略称名:プラズマ種子科学
領域設定期間:令和6(2024)年度~ 令和10(2028)年度
公募研究の期間:2年間,件数 (程度):25
単年度当たりの 応募金額(1年間):350万円
領域代表者:古閑 一憲, 所属機関:九州大学システム情報科学研究院
プラズマ駆動種子記憶操作: プラズマが駆動する種子内分子動態の学理創成
①領域の概要
植物は根ざした場所からの移動が困難であるため、環境の変化に対する高い適応能力を持ち、親が受けた環境の変化を種子のDNA修飾に記憶として格納し次世代に受け継ぐ。例えば、温暖化による作物の収穫量減少は、高温によりストレスを受けた親世代の記憶が種子に格納されたことが原因のひとつとなっている。低温プラズマは、電場・UV・荷電粒子に加えて高い化学的反応性を持つ分子(活性種:プラズマで発生した NO3-イオン、HOやNO、H2O2、N2O5などの二次生成化合物)を生体へ低ダメージで投与可能であり、新しい植物成長促進法として注目を集めている(この時に発生する生体内分子(タンパク質、ホルモン等)やシグナル分子も広義の活性種としている)。
本研究領域では、種子への空気プラズマ照射が、DNA修飾を変更し発芽特性の改善を示すことを明らかにした。この結果は、植物の活動の時間スケールに比べて非常に短いプラズマ照射による物理・化学反応が、種子内に格納された記憶を選択的に改変することを示唆している。本領域では、種子へのプラズマ照射による種子内DNA修飾の変動から着想を得た、「イオンや電場、UVを伴った活性種のどのようなプラズマ照射が、物理・化学過程を経て種子内部をいかに輸送し、なぜDNA修飾関連の分子動態(オミクス)を変え成長促進に至るのか。」という学術的問いを明らかにする。学術的問いを明らかにするためのボトルネックとなっている、高再現かつ精密なプラズマ照射、種皮や細胞壁・細胞膜と細胞質における分子輸送の理解、プラズマ照射起因のDNA修飾の分子機構を明らかにし、これらを統合して理解するための物理モデル・化学反応ネットワークモデルを構築する。以上より、種子に眠る記憶(DNA修飾)操作を目指す、「プラズマ種子科学」領域を構築する。
②公募する内容、公募研究への期待等
種子に照射したプラズマが駆動する種子内分子動態の学理を構築し、上述した学術的問いを明らかにするために設定した研究項目の内容と公募研究への期待を以下に示す。
[研究項目A01 『プラズマ班:活性種を自在に合成する学理の構築』]
研究項目A01では、種子へのプラズマ照射における再現性の向上と活性種の選択照射及び種子への局所的な照射の実現を目指している。目的実現のためには、複雑な分子性ガスの放電ののち、活性種などが生体表面へ輸送し、種子表面で反応する物理学・化学過程の学理構築が必須であると考える。期待する公募研究としては、低圧から大気圧までの気相中活性種の反応・輸送の理解(例えば、モデル実験の成果の現実的なプラズマへの落とし込み、照射パラメータ領域の拡張など)、活性種生成制御法創成(例えば新規活性種生成、生物分野研究者が使いやすいプラズマ創成)、気相・界面現象を明らかにする気相計測・モデル化、活性種の合成と生体活性の制御を実現するデータサイエンス的検討など、プラズマ科学の分野に限らず広い学問分野からの研究者を歓迎する。
[研究項目A02 『種子班:種子内部に届ける学理の構築』]
研究項目A02では、外環境と種子を隔てる種皮から種子内部の細胞壁・細胞膜、細胞核周辺の細胞質における分子輸送の理解と制御を目指している。期待する公募研究としては、種子表面から細胞内部までの分子輸送解析をサポートするモデル研究、生体分子反応(エピジェネティクスや発芽関連の生体分子動態など)のモデル化とこれに資する実験的、生物物理学的研究である。その他に、細胞間の情報伝達や、分子輸送の理解を深めるためのモデル植物の研究を期待する。動物細胞に比べ植物細胞の知見は多いとは言えずこれらを補完するためのアプローチ(動物細胞や微生物などでのモデル検討)などの新しいアイディアも歓迎する。
[研究項目A03 『オミクス班:活性種を利用する学理の構築』]
研究項目A03では、プラズマ照射におけるDNA修飾関連の分子機構から表現型までのオミクス変動の理解を基に、種子の記憶操作の学術基盤創成を目指している。期待する公募研究としては、DNA修飾に関わるトランスオミクスを化学反応ネットワーク又はバイオインフォマティクスとして検討するアプローチ、不明な点が多い植物のトランスオミクス内の分子動態を新たに発見するための研究、プラズマ照射とオミクス変動をつなぐ機械学習、DNA修飾変動以外のプラズマ照射による成長促進効果(環境変動や過酷な環境条件での効果)を検討するための研究の参画も期待する。
③公募する研究項目、応募上限額、採択目安件数
| 研究項目番号 | 研究項目名 | 応募上限額(単年度当たり) | 採択目安件数 |
|---|---|---|---|
| A01 | プラズマ班:活性種を自在に合成する学理の構築 | 350 万円 | 25 件 |
| A02 | 種子班:種子内部に届ける学理の構築 | ||
| A03 | オミクス班:活性種を利用する学理の構築 |
その他の情報
文科省のページ →令和9(2027)年度科学研究費助成事業-科研費-(学術変革領域研究(A)(公募研究))の公募要領・計画調書のダウンロード
科研費・公募要領(pdf) (p.32参照)